むかし、ある浜辺の村に、ばさまがすんでいました。 ある日、ばさまが磯へ行ってみると、岩のかげにたこがねむっていました。 大きなたこで、脚を一本切って桶に入れると、桶がいっぱいになったほどでした。 ばさまは、それをかくすようにして家へ持って帰りました。
「まだ、七本あるわい」 と思って、次の日に行ってみると、たこは昨日のままの姿でねむっていました。 そこでまた、一本脚を切って桶に入れて持ち帰りました。
こうして、ばさまは浜の人たちにはないしょで、七日間磯へ通って、たこの脚を桶に入れて運びました。 そして八日目。 「よしよし、これが最後だ」 と、八本目の脚を取に行きました。
ばさまが切ろうとすると、たこの脚がニューッとのびてきて、ばさまの首にからみつき、 ばさまはそのまま海の中へ引きずりこまれてしまいました。
―――― おしまい ――――
この昔話は、欲が深いばっかりにタコに命を取られた、欲張りばあさんの話として、 語り伝えられている事が多く 、主に神奈川県以西にもこれと同じような話が分布している。 本来は怪談話であったのではないかとも考えられているが、葉山町には、 この話が『七桶磯(ななおけのいそ)』として語られ、 森戸(もりと)海岸の西の防波堤のところに『七桶磯の碑』 と、この話が刻まれていた。 県内では、この他に三浦市三崎の小網代(こあじろ)、や横須賀市北下浦の長沢などにも同様の話が伝えられているようです。
(かながわのむかしばなし50選)より
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