2010/06/01

むじなの話


【  1.むじなの話 / (藤沢市片瀬)  】


  これは藤沢市の片瀬地域に伝わる昔話です。

  むかしといっても、それほど古い話ではありません。
近所のおばあさんに聞いた話です。

  おばあさんが、まだこどもの頃、片瀬山にはむじなが住んでいて、 夜になると村に下りてきたんだって。
  夜中に戸を叩いて、誰か名を呼ぶ者がいるので、
「はーい」と返事をすると、
「雨が降ってきましたよー、干し物を入れなさいよ」って言われたんだって。

  夜寝るときに、干し物を干しといた覚えもないのに、と思いながらも、
「おせわさまでーす!」ってとび起きて、おもてを見たら、
月夜で、星がかがやいていたんだって。

「まあ、ごらんなさいよっ、わたしゃむじなにだまされたよ」
って、いつか家へ来て笑いながら話していました。



―――― おわり ――――



 『むじな』は、かながわでは『もじな』という場合も多く、 地方により動物の「あなぐま」とする説や、「たぬき」だとするところもあり、 むかしからきつねと同様人をばかすと言われてきました。

  明治の作家で日本研究家でも知られる小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の著書、 「怪談」にも、「のっぺらぼう」という妖怪にばけて、人々を脅かすむじなの話があります。

  この頃はまだ、片瀬周辺にも、たくさん住んでいたのでしょうか。
いまでは、片瀬山もすっかり住宅地に変わり、こんな話も聞かれなくなりました。







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